オリクマ.jpg
オリンピックマを読む

駿河屋の福袋

その買うを、もっとハッピーに。|ハピタス
*お知らせ

駿河屋がマジで最高! ブログは、
あんしん買取がマジで安心! ブログに移りました。

2015年06月25日

トレカ屋開業 その26

  2 さっそくのトラブル

 商店街の幅が狭い。お客さんが来てくれるのは非常に嬉しいが、自転車で来られると二人分ぐらいで通路の邪魔になる。この商店街、客を来させる気あんのか?
 知らないおじさんが怒鳴り込んで来る。
「おい! そこに自転車置いていたら、通られへんやんけ!」
「あ、すみません。すぐに片づけます」
「今度、やると警察呼ぶぞ!」
(くそ、ここらの住民は何かあるたびに警察を口に出す。住みにくい地域だ、全く)

 確かに通れなかった。
 店に自転車を置くところがない。これはけっこう致命的である。
 店の興味を持ってくれた人はたくさんいた。
 しかし入れない。自転車が置けない理由で。
 ……んなアホな。たったそれだけでお客さんを逃してしまうことになる。
 店に置いている商品は面白い。値段もお手頃。だが、自転車……。
 もうこれは商店街のせいだと言ってもいい。
 たいてい商店街にはある程度の幅や自転車置き場があるもの。だが、この商店街にはない。
 時代に逆行した商店街。古い。何で、改修しないのだろうか。
 この商店街、経済的な意味ではほとんど意味がない。ただ、駅に行くにはこの道を利用する人は多かった。もはや通路だ。
 子どもは自転車が邪魔になることなど考えないので、とりあえず止めっぱなしである。
 俺がそれを毎回整理する。隙間なく、整理せざるを得ないので、持ち主が帰るときは手伝わなければ自転車を取り出すことができない。
 そのとき、接客が大変だったら、本当に手が足りなくなる。
 
 子どもが入店すると欠かさず俺は自転車の整理に行く。何と変な店なのだろう。
 これほど自転車に悩まされるとは。
 抗議も次第に多くなる。しかし、防ぎようがない。どうしたらいいのだろうか。
 仕方なく、店の中に駐輪場を作るという荒業に出た。自転車三台ぐらいなら入る。おかげで商品を置くスペースが減るのだが。
 
 たまに友達連れで、八人以上で来る子どもたちもいた。
 ……キツイ。俺はこの子たちに対して十分な対応がしてあげられない。
 徒歩限定の店になりつつある。
 そういう意味でこの商店街で店を続けることは無理になりつつあった。少し離れた商店街に店を出すべきだったか。あまりにも商店街として機能していない。
 なぜ商店街自体が潰れないのだろうか。
 皆、道楽でやっているのか。
 土、日の人けのなさには驚くばかりだ。通勤、通学のために通らざるを得ないゆえ、この商店街を利用しているわけで、それがないと行く意味のない商店街だった。

  3 冷房と暖房

 店にはクーラーらしきものがついていた。
 しかしこれがあやしい。
 まず色がとてつもなく黄色に変色していた。排気のところもよくわからない改造のようなものを施している。
 これ……絶対ちゃんと作動しないだろう。
 例え作動しても害のある空気が出てきそうだ。そういう理由もあって、クーラーは一度も使っていない。
 クーラーは店の入り口についており、涼しい風がそのまま外に垂れ流される恐れがあった。店の真ん中にでも付いていたらいいものの。
 ゆえに夏と冬は厳しい。
 
「おっちゃん、暑い〜」
 小さなお客さんが俺に言う。
「……確かに暑いな。ほら」と俺はその子をうちわであおぐ。
「ぬるい風しか来ないから、全然涼しくない」
 その子の言う通りである。しかし、大がかりな工事はしたくない。建物の持ち主がそう言うかもしれない。それに費用もかかるだろう。全部、俺が負担することになったらいくらかかるんだ。
 仮にそれができても、古いクーラーを処分することも必要だ。店を辞めるとき、クーラーも返さなければいけないんだろうよ。
 
 クーラーの代わりに扇風機を二台購入した。
 それぞれ離れた場所に設置。少しは涼しくなっただろうか。
 一台はカウンターの中に入れた。この暑さ、まず俺が倒れてしまう。
 扇風機、ヒーターを複数つけるが結局光熱費が高くついてしまった。
 高いときで六千円以上した。この小さな店にしては、これは大きな出費だった。
 そんなに電気を使っているのか? 多目にとられている気がした。ちゃんと正しく請求されているのだろうか。
 店舗自体が微妙に特殊なのでそういうことをつい疑ってしまう。
 
 平日は昼の十五時からの運営だった。
 気分次第でもう少し早目に開けることもあったが、子どもが学校に行っている間はどうしてもお客さんが来ない。近所に中学、高校があればまだしも良かったのだが、いかんせん近くにはない。
 前にこの店舗を使っていた人物はどうしたのだろうか。この訳のわからないクーラーを使いこなしたのだろうか。
 ちなみにこの店舗で営業しても、たいていは一年未満で店をたたむらしい。長続きしないのだ。その理由が少しわかった気がする。
 個人との契約とはいえ、改造されている部分や不足の部分が多かった。
 実はこの店、隣のクリーニング屋と同じ建物だったという。
 それに強引に仕切りを作って二つの店にしたのだ。
それゆえ、クリーニング屋からは二階に行けたが、おもちゃ屋からでは二階に行けない。
 なるほどそういう理由で安かったのか。
 クリーニング屋は二階のスペースを全く使っていなかった。
 おもちゃ屋なら使い道はたくさんある。
 宝の持ち腐れだ。
 店ではなく、小部屋だ。
 途中で何となくミスった感があまりにも強かったがもう遅い。
 どうせ俺の店も長く続かない。潰れたら潰れたでいいさ。

 店の入り口がどうも暗い。ただでさえ狭くてうっかり見落としがちなのに、こう暗ければよけい目立たないではないか。
 小型の電灯を買って、店の左右につけてみる。
 ……これなら少しは目立つか。
 この電灯の周りはかなり熱くなる。子どもが手に触れたら火傷しそうだ。
 一回、俺が落として電灯を割ったこともある。
 
 小型の電灯は光熱費が異常に高い。
 先月の光熱費と比べ、これを導入しただけで三千円近く跳ね上がった。
 この電灯、これほど電気を使うのか。明るくなったとはいえ、それも効果があるか微妙だ。それに毎月三千円投資する必要はあるのか。
 
 水道代も二か月で三千百五十円かかった。
 水道といってもトイレに使うぐらいだけだ。
 トイレといっても和式で、とても臭い。下はコンクリート。
 例え子どもの尿がコンクリートに垂れてもよくわからなかった。
 しかも鍵がちゃちいので、ちゃんとかけたか、どうかもよくわからない。
 自分がかけたと思っても、鍵のところをちょこちょこ動かしているだけで開いた。
 どんな鍵の仕組みしているんだ?
 しかも外からでも鍵を開けられてしまうような雑な作り。
 一度、俺がトイレに入っているとき外から扉を開けられたことがある。しかも大便のときに……。
 もう何でもありだ。
 
 ……ダメだ。この店。いろんなところでガタがきている。持ち主も直そうとはしない。
 はぁー、ハズレ引かされた。
 やはり値段だけで決めるのは間違いだったようだ。
 せめてトイレの中をもう少し広くするか、きれいにするか、洋式にするかのいずれかの改修はしてほしい。
 後半はもうトイレとしては機能せず、ゴミの一時保管場所にした。
 子どもが飲み食いするのでけっこう散らかるのである。
 だが、飲み食いといっても別に俺の店から出るものではない。店から十メートル離れたところにコンビニがあった。そこから購入したものだ。
 コンビニには自転車置き場があり、何度か子どもがそこに自転車を置いたことがあって、コンビニの店長が俺に文句を言いに来たことがあったが、俺の店のお客さんがコンビニにけっこう貢献していたためか、文句を言いに来ることが少なくなった。
 コンビニで買って食べた飲食物の袋や容器をこちらで捨てる。何とも情けないことか。
 
 初め、飲食は禁止にしていたが、あまりにもお客さんの要望が多かったため、それを採用している。床にはお菓子の食べカスが多く落ちるようになったが、仕方ない。
 元々の店が汚れているから、今さらどうってこともない。
 
 次第におもちゃ屋を続けて行くことは困難だと思いつつあったので、やる気がかなり減少する。もう馴染みのお客さんしか来てくれない。
 俺も店を営業するのがいい加減になってきた。気分が乗らない日は店を開けなかった。少しずつ、お客さんが減っていく。俺の資金は底をつきそうになる。
 お客さんとしゃべることは楽しいが、店員が馴染み客を作ると、新規のお客さんは店に入りにくい、買いにくいという意見もある。確かにそれはそうだ。
 しかし、店員は俺一人。どうしてもよく来てくれるお客さんに対しては仲良くなってしまう。また、それだけが楽しみでもあった。
 もう自分楽しまないと、この店をやり続ける必要もない。
 言い方を変えれば、お客さんとおしゃべりするために赤字しか出していない店を続けてきたようなものだ。

 俺はシャッターに絵を描く。もう何でもありだ。
 紙を両面テープに貼ってその上から描いた。
 向いはグループホームだった。そこのスタッフや利用者もどんなに素晴らしいものを俺が描くのか期待していたに違いない。
 だが、俺が描いたのは訳のわからない模様だった。
 紙がツルツルの素材だったので、思ったような筆の運びができない。
 また、紙が垂直なのでどうしても絵具が垂れてしまう。
 これはまずい。しかもずっと手を上に持ち上げていなくてはならない。
 机の上に紙を置いて描くのとは全く別物だ。一応風景を描いたつもりなのだが、そうは見えない。ただ、グチャグチャに絵具を塗り付けたようだ。
 はっきりいってこれは絵と呼べるものではなかった。
 ゴミを量産してしまった。ゴミをシャッターに貼りつけてしまったのだ。
 これは明らかに失敗。もちろんやり直しもきかない。紙はシャッターと両面テープで貼りつけている。紙がはがせない。はがしたとしてもシャッターに両面テープの跡が残ってしまう。
 
 これは店を辞めるとき大変なのではないか、そんな不安がよぎった。
 シャッターは一つ一つの板がじゃばらの形になって収納することがきる。
 そのじゃばらの板にそって、一番目の板の絵は残し、二番目の板の絵はカッターで切り抜いた。続いて、三番目の板の絵は残し、四番目の板の絵はカッターで切り抜く……。
これを繰り返すことにより、明らかに失敗した絵がちょっとオシャレな模様に変わる。上手くごまかしたつもりだ。

 今回、紙に貼って絵を描いたのだが、本当ならシャッター本体に絵を描いてみたかった。まあ、でもこの店舗は借り物だ。そこまではできまい。
 いずれ将来自分が店舗を持つようになったとき、その願いをはたそう。だが、そんな日来るのか?
posted by サイコー君 at 00:19 | Comment(0) | トレカ屋開業(自作ラノベです) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

トレカ屋開業 その25

第三章 おもちゃ屋開店中

  1 楽しくもあり、辛くもある

 いよいよ、店がオープンした。
 オープンと同時に何人かのお客さんが来てくれた。
「うわぁ! 夢の世界みたいだ」
 小さな子どもが嬉しそうなことを言ってくれる。
 店の中は造花で飾り、花だらけにした。そして新品の壁紙と床材。
 おもちゃと本、ゲームが揃う。
 そう、子どもにとってここは夢の世界なのである。
 
 レジについてだがホームセンターで購入したものがある。
 といっても、レジコードをスキャンするわけでもないし、レシートに商品名が出るわけでもない。
 百円の商品なら百円×一と表示されるだけ。かなり使いにくい。
 ひとつひとつ手打ちであるだから二十個とか売れたときはめちゃくちゃ嬉しいのだが、二十回も手打ちしなければならないのでかなり時間がかかる。しかもレシートには商品名は記載されない。
 せっかくのお客さんに何とサービスの悪いことだ。
 しかも間違って手打ちした場合、どれが間違ったのか、また一からやり直さなければならないのだ。
 コンビニでバイトしたことがあるので、今になって当時のレジの操作性のやりやすさに気づく。
 誤って、同じ商品を二回スキャンしても、ボタンひとつで訂正ができる。どの商品をスキャンしたかは画面を見れば一目瞭然だ。
 
 お客さんがいろいろな商品を買ってくれる。嬉しい。
 だが、在庫のスペースがないので、当分商品が変わることはない。
 これが売れたら次は何を売ろう。
 置くスペースあるのかな……と常に空きスペースについて気にしていた。
 駄菓子屋は同じ商品でも客は繰り返し来るが、おもちゃ屋はそうはいかない。
 いい加減に仕入れ、いい加減に売るだけでは難しい。
 ゲームソフトは意外にも、いや必然か? 大人の層にしか売れない。新作がないので、古くて珍しいと商品を手に取ってくれるお客さんが多い。
 そう言えば、そういう世代のソフトしか置いていないからな。いっそのこと、ゲームはレトロだけ揃えるか?
 無事、初日を乗り切る。
 二日目以降もお客さんは来てくれた。
 接客も少しずつ慣れてきた。もう少し違うことがしたい。何か店を盛り上げるアイディアはないものか。

 俺は看板に絵を描いた。
 店を目立たせることが重要だったので、とりあえず店の存在を知ってほしい。
 看板がなかったら、シャッターが閉まっているときは、ただのシャッター街の一部にしか見えなかったからだ。これではもったいない。
 ホームセンターで売っているパネルを二つテープでつなぎ、絵を描く。
 そして店のシャッターより上の、でっぱりがあるところに磁石で止めた。
 安定しない。下に落ちたら大問題だ。看板の大きさ、看板の薄さと不安定さもあって、外から見るといつ落ちてくるのかヒヤヒヤする。落ちないほうが不思議だと思うくらいだ。そういう意味では注目されたかもしれない。
 また、子どもの視線で見ることは難しかった。
 大人でもかなり首の角度を上げなければ見ることはできない。
 気づいた人はラッキー、いやラッキーでもないか。
 
 看板の作成中に女子大学生か専門学校生と見られる若い女性から、「いい絵ですね」と褒められたのを覚えている。
 前にも述べたが漫画家を目指していたので、絵のセンスを褒められることは非常に嬉しい。
 俺は物を売っているときより、何か作っているほうが楽しかった。店全体をアートしている感じだった。

 ある日、店にある人物がやって来た。
 話しを聞くと、商店街の看板の地図に名前を載せるから金を払ってくれというものだった。
 当初、俺は店をオープンして一か月ぐらいしかたっていない頃か。
 そういう決まりなんだと払ってしまう。
 商店街に地図を載せるだけで二か月につき三千円ぐらいかかった。
 資金がまだあったときはそれほど負担にならなかったが、次第にそれが高いと気づく。
 一番の問題はその効果だ。
 全く意味がない。商店街のちょうど中間地点に誰も見なさそうな看板が立っている。
 そこの地図にチラッと名前が乗るだけだ。断るのも可能なのか、よくわからなかったので、結局一年程度、金を払い続けた。
「やめる……? もう看板に表示されなくていいんですか?」
「ああ、いいです」
(効果、ないですからー、とはさすがに言えない)
 業者は、「何で払わねえんだ」といった感じで首をかしげて店の外に出た。
 はっきり言おう。こんな小さい看板を見て、店に来るお客さんなどいない。
 おもちゃ屋なんて口コミで自然と知れ渡るもんだ。
 
 やはり世間のこともほとんど知らない者にとってはキツイ。
 あらゆるところから俺から金をまきあげようとする。
 大人の世界は怖いものである。
 これならブログで紹介したほうが、タダだし、情報やイベントの告示なども自分自身でできる。好きなタイミングで。
 明らかにこちらからの集客のほうがメリットは多いだろう。
 現にブログに店の紹介をしたら、実際に遠いところから来てくれた例があった。
 そういうお客さんはたいてい大人なので、お金も落としてくれやすい。
 自分の趣味に共感してくれる主力なお客さんが増えた。
 今時、地図では集客できない。
 ネットだ。ブログ、ホームページである。
 これらを知らないお年寄りや無知な人たちから、お金をむしり取る看板屋は、俺にとっては全く意味のないものである。ぼろい商売だ。

 また別の日に、「この店でクレジットカード利用できるようにしませんか?」と営業の人が来た。
 ……いるわけねえだろ。
 何で、子どもが百円のおもちゃ買うのにクレジットカードなんか必要なんだ?
 そんなのいらねえ。
 途中、その営業の人もそれに気づく。
 ほんの十秒ほどのやりとり。
 ちなみにこういうクレジットカードによる買い物をすると、店側には手数料という負担がかかる。
 一律で何パーセントというのは無いようで、会社によって違うようだ。
 個人の店で契約するのはよほどのレアなケースでしかないだろう。
 通常、会社の規模とか売上で変わるが二〜八パーセントぐらいらしい。
 この手数料の額までは一般常識ではない。普通の消費者は知らないことである。
posted by サイコー君 at 00:18 | Comment(0) | トレカ屋開業(自作ラノベです) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

トレカ屋開業 その24

  6 最終調整

 俺はマスコット人形を作った。
 店の名前を動物の名前にしたので、その動物をモデルにした。
 かなりディフォルメはされている。この店といえば、これ! というものが欲しかった。
 というわけで製作開始。
 まずは新聞紙を何枚も丸めて形を作る。が、その時点で失敗!
 もっと本体を何か別の固い物にしておけばよかった。全然安定しない。
 丸めた新聞がどんどんはがれて行く。
 しかし、もう粘土を貼りつけていったので、あと戻りはできない。
 紙粘土ってこんなに使いにくいものなのか。
 思ったより紙粘土の使用が多く高くついた。二千円ぐらい使ったか。計算外だった。
 大きなものを作るのに、どうして百円の紙粘土で作れるか。あれは見た目より多くは入っていない。
 インターネットで検索し、もっと簡単にできる方法を考えればよかった。
 着色も汚かった。紙粘土ってこんなにボロボロ崩れていくものなんだ。
 一応は形にはなったものの思っていた出来栄えではない。
 基本はおもちゃ屋なので、こういうマスコットキャラにそれほど時間をかけるわけにもいかない。自分のアート展示場ではないのだ。
 ……まあ、これでいいか。
 妥協。マスコットキャラはこれでいくことに決めた。

 ――オープン用にチラシを作ること。
 自宅のプリンターで作ったら早いものの、なぜか印刷屋に頼んでしまった。
 割高で計一万円かかる。しかし、紙の材質は良かったかもしれない。
 このチラシを三日間、店の前で配った。
 当時、やる気がかなりあったので、こういうのを恥ずかしがることもなかった。
 元気よく、「よろしくお願いします」と言っていたのを覚えている。
 店のシャッターにもチラシをベタベタ貼った。
 テンションが高くなる。これぞ、店のオープン前といった感じだ。
 スタッフが他にいればもっと楽しかったのだろう。俺は自分でいろいろやることが好きで、集団行動はしないほうだった。
 しかし、今回に限っては同じ道を目指して進んでくれるパートナーがいてくれたらなと思っていた。
 
 ……もうほとんどの準備ができていた。緊張しながら、一日が刻々と過ぎて行く。
 この頃、小さい子の間ではまあまあ有名になっていた。
 スタッフは俺一人だったので、改装準備に時間がかかる。その間、シャッターを開けていることも多かった。
 何人かは、「ここ、何ができるの〜?」と訪ねてきた子どもたちがちらほらいた。
 大人も店を通り過ぎるときに横目でチラチラ見ていた。チラシより、開店準備をさらすほうが宣伝になったかもしれない。
 
 ついでに名刺も作ってもらった。これも自宅で作れたのだが、何事も経験である。
 名刺を渡す機会などほとんどないのだが、形だけでもちゃんとしておきたかった。
 名刺には俺の携帯番号が書かれた。百枚ほど作っただろうか。

 ――オープンは明日。
 辺りが暗くなってきた。
 俺は店の中にいたので、直接空を見たわけじゃないが、商店街が静かになり、通行人が中年の男性ばかりになったのでもう夜になったと思った。
 時刻を確認すると、二十二時。……思っていたより遅くなってしまった。
 明日の準備をしているとあっという間に時間が過ぎる。
 自分でも明日のオープンに緊張しているのがわかる。こんなんで大丈夫か?
 明日からは何人、何十人ものお客さんと接しなければいけないんだぞ。それも一人で。
 俺のデビュー戦ともいえる。これ以上夜更かしして、明日を寝過ごすなんてことはあってはならない。もう帰宅する時間だ。
 俺はそろそろシャッターを閉めようとする。
 高い所のシャッターを下げ閉めるときに使う棒、シャッター棒もしくはフック棒と呼ばれるものだが、それを使うまでもなく手で直に閉める。それほど天井が低いのだ。
 半分ほどシャッターを閉めたところで、二人の女の子が背をかがめて店の中に入ってきた。
 
「……ほう。なかなかさまになってきたな。それらしく見えるぞ」
 なかなかかわいい子だ。
 店の中には俺と彼女たちだけ。自然と心拍数が上がる。
 美人と話したり、接したりすることは苦手だ。
 美人というだけで緊張する。そういうわけで俺は女の子と付き合ったことはない。
 そんな俺を昔、ホモか? とからかわれたことがあったが、断じて違う。
 女の子は好きだが、俺に度胸がないだけだ。ルックスにもしゃべりにも自信がない。
 定職には就かず、自慢できるものは何もない。そして、今や一か八かで店を開業した具合である。
「あ、すんません。オープンは明日なんで……」
「おや、もう忘れたのか? わたしの顔」
 どこかで見た顔……。
 こんな美人な子、忘れるわけがない。そう、数か月前に会った自称神様だ。
 
「あ! 周活子! それに陣栄子!」
「呼び捨てにするな! 一応神だぞ!」
「……すみません」
 彼女たちはまた同じような格好をしていた。つまりコスプレである。
 神というのならその証拠を見せてほしかった。
 まだ信じられないので、俺はどう対応すればいいのかよくわらない。
「で、これだけ揃えるのにいくらかかった?」
「百二十万ぐらいです。全部、貯金を下しました。」
「ほう、よくそんなに金があったもんだ。回収できればいいのだがな」
「で、今日は何しに来たんです?」
「別に。明日がオープンだから様子を見に来ただけだ」
「繁盛しますかね?」
「わからん。お前次第じゃないか。……次に来るときは、お前が辞めるときだ」
「そんな、まだオープンもしていないのにそんなこと言わないで下さい」
「だまれ! せいぜい一年か二年……例え、辞めても得られるものはある。がんばれ」
 二人は帰ろうと半分閉まっているシャッターから出ようとする。
 
「おっと、これでももらおうか」
 彼女がそういって手にしたのはかわいい絵柄が描かれたシールだった。
「先輩が最近、寿退社をしてな。できちゃった婚ってやつだ。わたしはよく世話になったからな。明日の夜会うことになっている。そのときこれをシャレで渡してやろう」
「……あの、神様の先輩が寿退社って。その、できちゃった婚もするんですか? 先輩っていうぐらいだからその方も神様なんでしょ?」
「うるさい! うるさい、うるさい……いくらだ? このシールは?」
「えっと、五十円です。値札に貼っている通り」
「そら五十円。記念だ。この店のお客一号はわたしだからな!」
「え……だから店のオープンは明日……」
「細かいことは言うな……これから困難なことがたくさん起こる。そのたびに店を辞めたいと思うだろう。たぶん、皆がそう思う。皆が通る道だ。自営業は辛いものだ。へこたれるな。負けてもいい。思い切り、頭を使ってやってやれ!」
 何だかよくわからないが、励みになった。
 彼女、理由はわからないが俺を応援してくれている。
 よし、やるぞ。明日からやるぞー!
 
「あたっ!」とシャッターに頭をぶつける周活子。
 さっきまで低い声で偉そうな口調で話していたのに、このときだけはとてもかわいい女の声だった。
「いたぃ〜。翔子〜」と外から聞こえる。
 翔子? 確か小さい子のほうは陣栄子ではなかったか?
 翔子とは……?
 でも、あんな大胆な服装で外に出て……悪そうな奴らにナンパでもされないかな?
 ちょっと心配だ……。
 
posted by サイコー君 at 00:17 | Comment(0) | トレカ屋開業(自作ラノベです) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

トレカ屋開業 その23

 次にソフトをゲームの箱から取り出し、ディスクケースに入れる。ディスクケースの番号をゲームの箱にもシールで貼っておくのだ。
 記号を組み合わせればよかったものの、三百番目なら0300とした。これによって、お客さんからこれが三百円かと聞かれることがよくあった。
 しまった! A300とかにしておけばよかったと後悔した。
 
 この技は昔、古本屋で働いたときに身に付けた。
 当時の古本屋では番号の前にNO(ナンバー)の印字をつけていたが、それでもやっぱり紛らわしいか。どうせ貼るなら箱の後ろにつけておくべきだった。
 ゲームの箱の正面に、値段のシールと一緒にディスク番号のシールが貼っているので、どちらの数字が値段なのか判断しにくかったのだろう。
 もう少し、研究する必要があった。
 
 そんな後悔をしながら黙々と作業が進む。
 一人で店を切り盛りすることは気が楽だが、全部のことを自分一人でやらなくてはならない。しかも決まった給料は出ない。
 そんなことを考えると、いかに自分が今やろうとしていることはリスクがあって、リターンが未知数なのだろうと思ってしまう。本当にこれでよかったのか……。
 
 俺はついでに外装するビニールの袋も買った。
 ……けっこういい値段になる。
 お買い物用のビニール袋も各種の大きさの違うものを揃えた。
 普通、袋には自社というか、店のロゴみたいなのが印刷されているが、うちの店では無地だ。個人の店という味を出しまくっている。ちなみに一番小さいサイズで値段が一枚一円以下。
 大きくなればなるほど、多少値段は高くなる。
 大きな紙袋は高いので、使用時には考えなくてはならない。たいていが五十円以上百円前後するのだから。
 シールを直接ゲームソフトの箱に貼ると、シールがきれいに取れないことが判明した。
 外装の袋の上から貼るべきだったがもう遅い。これまた、しまった。

 作業中、向いに中年の女性が大きなタンスを捨てようとしていることを発見した。
 タンスはかなり大きい。俺はすぐこれが何かに使えると思った。
 俺の店から真正面だったのでそのまま駆け寄り、俺は彼女に声をかけた。
 もしよければそのタンスをくれないか、と。
 彼女はこれを承諾。
 まあ、粗大ごみに行く予定だ。俺がよっぽど嫌な奴でなければ断ることもないだろう。
 しかし、一つ疑問が残る。タンスを捨てるのなら事前に粗大ゴミ受付センターに連絡を入れなければならない。しかも有料で。
 この人はこの手続きをしていたのだろうか。
 もしそうでなければ、タンスはずっとその場に放置されることになるだろう。
 ……んー、これはどういうことだろうか。持ち主がのちに粗大ゴミ受付センターへ連絡を入れてくれたのだろうか。
 ということで、俺はこの重いカウンターをもらうことにした。
 俺一人しかいなかったので、タンスを転がすように移動した。
 うん、これはやはり重いな。
 
 使い方はもう決めてあった。カウンターにしようと。
 どこにタンスをカウンターとして使う者がいるだろう。個人の店だから何でもありである。
 俺はタンスの扉を抜いて横に立てかけて、そこをカウンターにした。
 ちょっと低いが、なかなかいい感じだ。元はタンスなので、収容量も多い。
 ただ、中は空洞なので、力をかけるところによってはバキバキと音を立てて、壊れるのでは? と思うこともよくあった。
オークションでカウンターを探しても、どれも高かったのでこれには重宝した。
おかげで、タダでカウンターを手に入れることになった。
 しかし、単にこれをこのまま使うのでは味気ない。俺はカウンターにペイントした。
 絵具だけで何とかしようとした。
 俺は風景を描いた。紙とは違い、木に描く。水分をすぐに吸収してしまうので、なかなか描きにくい。実際、出来上がったものは自分が納得できるものではない。
 しかし、ここまできたのだからこれで押し通そう。ということで、変なカウンターが完成した。
 一見、ただの汚れにしか見えない絵。お客さんはこれをどう思ったのだろうか。
 とはいえ着実に一つずつ課題をクリア。
 徐々に店っぽくなっていく。
 そしてある重大なことに気づいた。
 在庫のスペースが本格的に足らないことを。これはどうすべきだろうか……。
posted by サイコー君 at 00:13 | Comment(1) | トレカ屋開業(自作ラノベです) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月22日

トレカ屋開業 その22

 ただ、価値がわからないので値段をつける作業はほぼいい加減だ。
 一本一本インターネットで検索するのもありだが、とにかく量が多い。
 さらに今後仕入れなり、買い取りなりでソフトがさらに増えると毎回確認することも億劫になってくる。
 なので、値段は俺の勘。面白そう、人気がありそうなものを高く設定した。
 ……んー、しかしこんなもんでよく店が成り立つな。
 新品ソフトは元々置くつもりはなかったので、個人の味が濃く出るおもちゃ屋、兼ゲームと本を扱う店を目指した。
 今時、こんなレトロゲーで勝負する店もないから自然と差別化された。
 ……まあ、いい。大きく稼ぐよりは細かくせっせと稼ぐほうが身にあっているからな。

 ハンドラベラーと印字するテープの玉を購入した。
 ハンドラベラーは七千円ほどした。けっこう高い。素材はほとんどプラスチックのくせに。
 玉を間違って幅の足りないものを購入。もう使ったあとなので返品はできない。
 もったいないが仕方ない。
 なにせやることほとんどが初めてなので、どこか確認不足になってしまう。
 十玉もしくは十巻と呼べばいいのだろうか。玉は十個で千円ほどだ。
 俺は再度、正しいサイズの玉を購入した。
 ディスクを入れるためのディスクケース? と言えばいいのか、それを大量に購入した。
 五百枚以上は買っただろうか。それに番号をつけたシールを貼った。
タグ:自作ラノベ
posted by サイコー君 at 23:06 | Comment(0) | トレカ屋開業(自作ラノベです) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


福袋 | 福袋 | 通販ショップの駿河屋

現在開催中のキャンペーン|通販ショップの駿河屋


ゲーム・古本・DVD・CD・トレカ・フィギュア 通販ショップの駿河屋
Pi.jpg