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2014年02月14日

福袋に取り憑かれた女(23) *完結

  2 うまい棒の結末

 それからしばらくの月日がたった。
 俺とみほは学校が同じで教室も同じだ。話すことはなくても、毎日顔を合わす。――前からみほの顔色が悪いことに気づいていた。俺はもう話しかけずにはいられなかった。
「みほ、顔色悪いぞ。大丈夫か?」
「あ、修一……話しかけてくれるなんて珍しいじゃない」
「そりゃ、そんな顔してたら誰だって心配するぜ。あれか、またツイッターやってんのか。二十アカウントのやつ。それとも三十アカウントぐらいにした?」
「そんな……十アカウントのままよ。もうずっと放置。五日に一回ぐらい駿河屋で売れるの。わたしのアフィリエイトリンク経由でね」
「よかったじゃないか。駿河屋に貢献してると思うよ」
「ふふ、ねぇ。それよりわたしの顔色が悪いって話。どんな感じ?」
「どんな感じって……鏡見てないのかよ?」
「普段見てるとなかなか本人は気づかないってことあるでしょ? ……ね、言って。修一なら本当のこと言ってくれるでしょ」
「ん、まあ……それでいいって言うんなら。まずはニキビが増えたよな。あと肌も荒れてる感じ。ツヤツヤ感がない。ビタミンっつーか、栄養摂ってんのか?」
「あー……やっぱり」
「やっぱりってなんだよ。心当たりあるのか?」
「もちよ。……さすがに毎日うまい棒三十本はキツイか」
「……あ? 今なんて言った?」
「うまい棒三十本。賞味期限の問題もあるでしょ。それに多すぎて邪魔で仕方ないわ。だから食べてるの。毎日。三十本」
「アホ……だろ。飽きたか。捨てろよ。それが嫌だったらクラスの奴らにでも配れ。喜んで食ってくれるぞ」
「わたし……なんか間違っていたような気がする」
「今頃かよ」
「ノリで買っちゃった……ノリで」
「ノリで行動することが必要なときもあるが、場合によっては危険なときもある。って、そんな当たり前のこと言わすな」
「わたし、もう食べたくないよ。うまい棒……」
「だからクラスの皆に手伝ってもらえって」
「そんなぁ……なんて言って配ればいいのよ。『うまい棒、三千本買ったけど食べられなくなったから食べて下さい』って、そんなこと言える?」
「そのセリフ、過去に戻って、うまい棒を買う前のお前に聞かせたいよ」
「冷めた……駿河屋熱、もういいや」
 なんだ、このオチは……。
「結局何本食べたんだ。えぇ?」
「二百八十本……ぐらいかな」
「まだ十分の一にも達してねぇ。先は長いぞ」
「そ、そんなぁ」
「これからもっともっと体を壊していくわな。肌もカッサカサで髪の毛もあぶらっこくなって、そのうち女友達からも避けられるぜ」
「そ、そんな……ヒクヒック!」
「泣くな……悪かった。ちょっとした仕返し。あのとき、俺の言う話、全然聞こうとしてくれなかったから」
「ごめっ、ごめんねぇ……」
「放課後行ってやるよ。食ってやる。一日百本ぐらいだったらいけらぁ。一か月もすればきれいさっぱりお前の家からうまい棒はなくなってるぜ」
 甘いな、俺も……。守ってやりたい、俺はそう思ったんだ。こいつを、みほを……。
「修一、ありがとぉ。ホント、ありがとぉね」
 こいつとはずっと一緒にいてぇ。これから大人になってもずっと、ずっと……。



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posted by サイコー君 at 22:13 | Comment(0) | 福袋に取り憑かれた女(自作ラノベです) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

福袋に取り憑かれた女(22)

「う……」
「おっ、おい、みほっ?」
 みほは突然、椅子から横に倒れそうになった。俺は彼女の肩を抱えた。
「あ、ごめん。ちょっと気が抜けちゃった」
「ほとんど寝ていなかったんだろう。その緊張感が一気になくなったんだ。今日は一日寝ておけよ」
「え? だって授業が……」
「こんな状態だったら授業もなにもねぇだろ。早退……いや、今のお前を家に帰らすなんてできないな。目をつむったまま自転車走りそうだ。おっかねぇ」
「あはは、そんなわたしドジっ子じゃ、ない……」
「そう言いながら寝ようとするな。……じゃあ保健室だな。おい、立てるか?」
「むにゃ、立てないよぅ……」
「世話のかかる奴……。ほれ、肩を貸してやるから。行くぞ、まさかお姫様抱っこして保健室行くわけにはいかねぇだろ」
「むにゃむにゃ、また駿河屋で福袋買いたいなー……」
「目ぇつむったままでいいから。その代わり足動かせ、足」
 子どもみてぇだ。足を引きずるようにして保健室を目指す。……ひゃー、そういや階段、どうやって下りよう。
 俺の耳元にみほの寝息がかかる。……なんか嬉しいな。俺を信用してくれるっていうか、頼りにしてもらってるっていうか。
「駿河屋ぁ……」
「はいはい、俺たちは駿河屋を愛するスルガイヤー。福袋は帰ってから何個でも買え。どうせ雑貨の福袋だろ。四百八十円だ、安い安い!」

 ――昼休み、みほは欠伸をしながら教室に戻ってきた。
「ふわぁ〜、あ〜、よく寝た」
「爆睡したみたいだな。少しはスッキリしたか?」
「あ、修一。……ありがとね、助かったよ」
「あんまり無茶すんじゃねーぞ」
「うん……あのさ、今日ウチに来なよ」
「おぉ、もしかしてあれか。とうとうアフィリエイトリンク入りのつぶやきをするとか?」
「まあね。最初っからアフィリエイトリンク乗せてつぶやいていたらさ、誰もフォローしてくれないと思ってまだやっていないんだ」
「あー、そうか。フォローとかフォロワーの話ばっかだったが。確かにツイートもある程度しておかなくちゃいけないよな。なんのつぶやきもしていないアカウントなんて、誰もフォローしたがらねーよ。じゃあ二十アカウントすべてにそこそこの記事を……」
「うん、やった。すっごい大変だった」
「そりゃ疲れもたまるわ。それ、ずっとやり続けるわけ?」
「フォロワーを増やそうと、無理にフォローはしていかないつもり。フォロー返しのツール使ってるの、実は」
「あぁ、俺も知ってるよ。確か、ツイッターを提供している会社でもそのフォロー返しツールは確か公認だったんだよな?」
「そう。だからちょっとずつだけでフォローとフォロワーの数も増えると思う。そのためにはなにか得するようなつぶやきしなくちゃね!」
「でも、二十アカウントすべてにつぶやき……しんどいぞ」
「ふふ、実はこれも試してみたの」
「なにを? だよ」
「ボット」
「ツールじゃねぇか! お前、ツールは使わないんじゃなかったのかよ?」
「ツールっていってもしていいものと悪いものがある。……たぶんボットはグレーゾーン」
「自分で言うな」
「でも、これまで使っていても凍結の対象にはならなかった。それにつぶやく間隔も六時間ほど空けてる。そうじゃないと複数アカウントなんてとても扱えないわ」
「そりゃあ二十アカウントだもんな……ホント、よくやったよ、お前は。ま、凍結されないならやったらいいさ。やってやれ、お前の駿河屋の気持ち、思いきりぶつけてみろ!」

 ――で、放課後はみほの家へ。さすがに教室で、「駿河屋が!」とか「アフィリエイトが!」なんて会話はできない。いや、ノーマルなテンションならやるが。でも、今回は駿河屋のアフィリエイトを本格的にやる特別なことなんだ。とても普通のテンションでいられる自信はない。絶対叫ぶ。そっちの自信はあった。
「ボット……便利だよな。十パターンのつぶやきを登録するのか?」
「うん、メモ帳なんかでまとめておくの。で、自動でボットをしてくれるサイトがあるからそこで複数行を選択。そうすると、一行が一つのつぶやきになるんだ。これだったら十回登録するんじゃなく、一回の登録で十パターンつぶやいてくれる。それもランダムで」
「で、同じ十パターンを二十アカウントでつぶやくわけか……考えたな。仮に一日四回つぶやいたとしても、二十アカウントで八十ツイートだ。それも自動でやってくれる。でもさ、ずっと同じつぶやきだったらさすがにフォローしてくれている人も飽きるだろ。その対策は考えているのか?」
「うん、確かに十パターンだけだったらすぐに飽きると思う。だから百パターンぐらいにするの。……格言なんてどうかしら?」
「あぁ、あるある。有名人のとか、恋の格言とか。……そうかぁー、そういうのを一定の間隔でつぶやいていた人ってボットを使っていたんだな」
「たぶんね。で、たまにアフィリエイトリンクを含んだつぶやきをするの。その割合は二割ぐらいがいいかなって思ってるんだけど……?」
「あぁ、問題ないと思うぜ」
「じゃ、登録しようか。二十アカウントっていっても、二十分もあったらできちゃう。ボットのつぶやき登録はとても簡単よ」
「なるほどなー、今までの苦労が報いてくれたらいいな」
「駿河屋の良さはよく知っている。知ってくれたら、皆だって買うよ」
「へへ、楽しみ」

 つぶやきの登録が終わると、みほが福袋を買うなんて言い出した。まあこれは前によくあったこと。――でも、今回はちょっと違った。
「うわっ! ちょっ! これ、これすごい!! ギガ福袋っ!!!」
「あ……なに言ってんだ?」
「すご、これ。駿河屋、勝負に出た。勝負に!」
「いつも勝負している店だろ」
「違う、これ見て。うまい棒千本セット!!」
「千本? ……たはぁー、やられたっ! また想像の上を超されてしまったかー」
「千本よ? 百本じゃないのよ。……一体いくらだっていうのよ。定価で買うと一万円じゃない。うまい棒、一万円まとめ買いする人なんている? いたら変態だとしか思えない。ないない! 絶対あり得ない!!」
「ギャグにも程があるだろ」
 価格は六千九百八十円。けっこう安い。
「十円のうまい棒が七円ってとこか。うまい棒って一本いくらで仕入れてるんだ? それで儲けが出てるってこと? いや、今回は完全にネタに走ったな。たぶん売っても駿河屋には利益はないぜ。あっても数百円ぐらいじゃないか。本当に客を楽しませる会社だな。……おい、どうした?」
「これ、これは……買えってこと?」
「なにが? ……まさかお前、この福袋買うつもりなんじゃないだろうな? これは今までの福袋とは違うぞ。中身はわかっている。福袋という言葉に惑わされるな!」
「いや、それこそ違う。これは正真正銘の福袋……。わたしをきっと試しているんだわ」
「んなわけないだろ」
「駿河屋がネタに走ったってことは、駿河屋を愛するわたしはこのネタを受け止めなければいけない!」
「おい、冷静になれ。ジョギングでもしてこい。千本だぞ? 誰もこんなの買わねーよ。ほら、よくあるじゃんか。二〇一四年だから二千十四万円のダイヤの福袋とか。そういうノリだよ。主催者側も売れることを期待していない。話題性を狙っているんだって」
「でも、買える。六千九百八十円なら買える……」
「買える……そうだな。確かに買えるな。だがな、うまい棒千本買いました。お前の親はどう思う? お前の友達は? ……俺もお前がこれをマジで買うと引くぞ。完全に」
「周りなのことなんて関係ない。駿河屋がわたしを試している。買う! 買わなくちゃ! いくつ……いくつ買おう?」
「待て! ……お前、今いくつって言ったよな。百歩譲って千本買うのはわかる。それでもお前はやばい奴だ。心からそう思うよ。でも、まだ許せる。だが、『いくつ』? そんなもん一つに決まってるだろうが。わかってるのか? 一つで千本セットだ」
「わかってるわよ。だからいくつ買おうか迷っているんじゃない」
「まさか……二千本買う、とか?」
「それじゃあインパクトがあまりないかもね。スルガイヤーとしては駿河屋でさえ、あっと驚かすようなそういうアクションを取りたいわ」
「おい……お前は今、ギャグで言ってんのか? あぁ? 俺を困らせて楽しんでんだろう?」
「なにを……そんなこと少しも考えたりしない」
「ギャグって言ってくれよ。もうこれ以上ついていけない。お前が壊れていくところを見たくない。千本だぞ……俺がそこらのコンビニで百本かき集めてこようか? それの十倍だ。二千本ならその二十倍。実物を見れば千本の多さがわかるだろう。そっちのほうがまだ被害が少ない。行ってくるよ、だからそれまで買おうとするな」
「ダメ……よ。駿河屋の福袋の特徴として、いいものはすぐになくなる。この福袋ももうすぐ売り切れになるわ」
「ならねぇって! セールが始まってもう何時間もたっている。でも、まだ売れ残ってんだ。その意味がわかるか? これはネタ! 買おうとする奴なんていない!」
「日本で誰一人買わなくても、わたしは買うわ」
「ちくしょう!」

 勘弁してくれ。こいつをここまでさせた原因として、俺が助長させたのも事実だ。
 とうとう壊れやがった。
「今、あるお金……三万円ちょっとある。駿河屋の雑貨福袋で稼いだお金。ヤフオクで転売したお金。これを全部使おう。やった、ギリギリで三つ買える。三千本だ。やった……クリック、注文しなくっちゃ」
 みほの手がマウスの上に移った。
「やめろっ!!」
 俺はその手を払いのける。幸い、駿河屋のサイトでは一クリックで注文はできない。少なくとも四クリックはする必要があった。途中ならどのタイミングでも、ページを閉じれば未購入となる。
「なにするの? 邪魔しないでよ」
「買わせねぇよ。あとで後悔するのはてめぇだ」
「わたしがなにを買おうたって勝手でしょ。それにこのネタをブログやツイッターに書いたら人気も出るわ。一石二鳥じゃない」
「誰が信じる? うまい棒を三千本買っただなんて……画像でもアップするのか? それなら信じてもらえるが、わたしは変態ですって言っているようなもんだぜ」
「買わして! うまい棒!」
「いいや、買わせない! せめてっ! せめて千本にしろ。三千本はまずい。学校でも問題になるぞ。お前はここの地域で生きていけない!」
「わたしは駿河屋を愛する、者……わたしが買わないと駿河屋のうまい棒の在庫も溜まるし……」
「向こうはそういう大きな倉庫持ってんだよ! でもお前んちは普通の家だろ! うまい棒、部屋に三千本入れんのか? あぁんっ? お前が病院に入れられちまうぞ!」
「それでも、わたしは買うの」
「……勝手にしろっ!」

 俺は部屋を出るときにこう言った。
「お前はもう俺の理解できない領域に入った。俺はもうついていけねぇよ。俺はスルガイヤーでもなんでもねぇ。二度と俺の前で駿河屋の話をしないでくれ」
「修一、あなたは忘れたの? 駿河屋で買った福袋の数々。あのドキドキを忘れられるの? ……もっと深みにはまりたいと思わない? 駿河道は奥が深い。これからも駿河屋だったらきっとなにかしてくれる。もっと、もっと駿河屋の魅力を……」
 聞いていられなかった。俺はみほの言葉を遮り、家を出た。
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2014年02月11日

福袋に取り憑かれた女(21)

 ――後日。
「なぁ、みほ。お前ってツイッターとかやってる?」
「え? ……うん、一応やってるけど」
 日曜日、俺はまたみほの家に来ていた。昨日は帰ってからアフィリエイトのことをまた少し調べてみた。近道を探しているわけじゃないけど、やったほうが有利なことや、これだけはやってはいけないこと。そういう決まったルールがあるはずだ。それらを知ることは悪いことではない。むしろ知るべき。――で、俺がこれはいいなと思ったアフィリエイトのやり方がある。それについてみほの意見を聞きたかった。
「フォロワー、どれくらい?」
「五十人ぐらいだけど」
「じゃあフォローも同じ感じか」
「うん。やりとりしてるのって同じ学校の友達か、地元の子ばっかりだから」
「五十ね。そうか、まあそんなもんだよな。……なぁ、その五十人に駿河屋のこと紹介したらフォロワーの皆はどう思う?」
「え……ふーん、で終わるんじゃないの」
「うん。俺もそう思う。駿河屋、つまり通販を利用する人間って基本的に大人だ。高校生も利用するかもしれないけど、クレジットカードとかそういうのあるからな。だからまあ代引きっているシステムが存在するわけだが、まあ基本大人だ。駿河屋はアダルトも商品も多いしね」
「うん……それで?」
「だったら大人に呟いてみたらどうだろう? もちろん今のみほのツイッターアカウントに、大人のフォロワーはいない。いても数人だろ。それも身内や、身近にいる人。せいぜい十人ってとこだ」
「うん」
「ツイッターはなにもアカウントを複数持っていてはいけないなんていう決め事はない。もちろん十個も二十個も作れば目をつけられるだろうが、二個ぐらいは問題ないんだ」
「ツイッターでアフィリエイト用のアカウントを作るってこと?」
「そういうことだ。そこで駿河屋のアフィリエイトリンクを含めたつぶやきをすればいい。フォロワーは多ければ多いほどいいな。今の時代、ブログよりツイッターのほうがいい集客ができる。ブログとツイッターを連携すればさらに強いアフィリエイト媒体になる。やろう! これならいけるかもしれない」
「待って、でも一体誰をフォローするっていうの?」
「そうだな、ゲームやマンガなんかは他のショッピでも買えることができる。それも悪くないんだが、俺としては断然同人誌を勧めたいね」
「同人誌? ……でも、なんで?」
「同人誌が通販で買えるショップ……そんなの駿河屋以外で聞いたことがあるか?」
「ヤフオク? ぐらいしか知らないかな……。でも、同人誌なんて売れるの?」
「売れるさ! たぶんな、俺もその道には詳しくないけど、確かに熱い市場だ。駿河屋のレビューの中にも同人誌を買っている人は多い。そして、売っている人も多い」
「あ、ホントだ……気づかなかった」
「ツイッターで『同人誌』で検索してヒットしたアカウントを片っ端からフォローするんだ。そしたら十人に一人はフォロワーになってくれるぜ」
「でも、そんなに一度にフォローしたらアカウント凍結されてしまうわ。せいぜい一日に十人が限界……」
「そう考えると、一日につき一フォロワーか。一か月でも三十人か。ちっと少ないな。千とか二千とか、フォロワーのついているアカウントも闇(ヤフオクなんか)で売買されているらしいが、そういうのには手は出さないでおこう」
「当たり前じゃない!」
「昔はもっとフォローできたって話だがな。そう、一日に百人とか二百人フォローしても凍結されなかったが今はやばい」
「……わたしにいい考えがある」
「なんだ、それは?」
「へっへー、ちょっと時間かかるけど、うまくいけば爆発的にフォロワーが増やせるわ」
「まさか、ツールを使う気か? それは危険だぞ」
「まさか。修一がヒントをくれたじゃない」
「俺が……この会話の中でか?」
 みほはなぜかそのやり方を教えてくれなかった。理由は俺を驚かせたいかららしい。なんだ、それは?
 しかし、楽しみでもあった。俺がこれ以上口を出すことも、少々やりすぎとも言える。……だったら、お手並み拝見といこうではないか。

 ――一か月後。
 この一か月、俺はみほの家に呼ばれることはなかった。学校でも駿河屋の話を全然しない。俺からたまに声をかけるが、いつもとてもしんどそうにしていた。
 ……なにやってんだよ?
 駿河屋の話はしないし、ブログの話もしないし、アフィリエイトの話もしない。話自体なにもしない。これはおかしい!
 いても立ってもいられなくなり、俺は学校でみほに問い詰める。
「みほ! いい加減にしろよな。自分が今、どんな状態なのかわかっているのかよ? こんなに目にクマなんて作りやがって」
「修一? ……あぁ、そうね。そろそろいい頃合いかもね」
「なんの……ことだ?」
「ツイッター。わたしね、この一か月がんばって……フォロワー一万超えしたよ」
「一万? マジか、それ?」
「うん。今日、放課後見に来ない。……って、別にここでも見れるか。ここで見せてあげるよ」
 みほがケータイを取り出して、ツイッターの画面を見せてくれた。でも……。
「フォロワーが五百しかいってねぇ。これだけでもすごいが、一万には遠く及ばないぞ」
「ふふ、一応これがアフィリエイト用のメインのアカウント。つまり一番手ね」
「一番手? だったらもしかして、二番手、三番手……複数のアカウントを作ったってのか?」
「そう。二十個も作っちゃった。いつ全アカウントが凍結されるか、削除されるかヒヤヒヤしていたんだけどね。でも大丈夫だった。今は一つのアカウントで一日、二十人フォローしてる。知ってた? フォロワーがある程度あったら、それぐらいのフォローはしてもペナルティにならないよね。実体験……こればっかりは自分でやらないとわかんないよね」
「お前……それ、めちゃくちゃ大変だったろ。その、毎回アカウントを変えてフォローするんだろ。それも二十アカウント分を」
「うん。まあね、時間さえかければ誰にでもできるけど……でも、精神的にやっぱりきつかったなぁ〜。同じことの繰り返し。十人フォローしても一人もフォロワーになってくれないときもあった。それに、常にアカウント凍結の恐怖……あはは、おかげで最近全然寝てないや。でも、もうこれでいいかな。だって合わせて一万フォロー、いったんだもん」
 すげぇ……並大抵の気力じゃあこんなことはできない。これを……みほは一か月も続けたってのか。
「なにが……お前をそうさせた? なぜ、こんなにがんばれる?」
「初心を忘れたの? それは駿河屋を愛するが故によ」
 そうか……そうだったな。
 こいつ、根っからのスルガイヤーだったってことかよ。

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posted by サイコー君 at 05:14 | Comment(0) | 福袋に取り憑かれた女(自作ラノベです) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

福袋に取り憑かれた女(20)

第三章 アフィリエイトに挑戦する

  1 駿河屋のアフィリエイト

 ある日、学校でみほがこんなことを言い出した。
「修一、アフィリエイトって知ってる?」
「アフィ……あぁ、聞いたことがあるな。確か、ホームページとかブログでどっかの商品を紹介するんだろ。で、誰かがそこを経由してアクションを起こすと、報酬がもらえるってあれな」
「知ってるんだ、やるじゃん!」
「だてに暇人はやってない。んで、もしかしてアフィリエイトやりたいっての?」
「うん、やりたい!」
「……それって駿河屋の?」
「そうよ。だってわたしたちだいぶ駿河屋のこと知ってきたじゃない。駿河屋がいいお店だって、もっといろんな人に知ってもらいたいわ」
「でも、そうすると雑貨の福袋とか買えなくなるかもしれないぞ。価格も上がるかもしれない。それだけ人気だったら九百八十円でもいいかぁ、なんて思うんじゃないか」
「でも、それでもわたしが駿河屋から受けた影響は大きい。わたし、駿河屋に恩返ししたいのよ」
「マジか……なんだか悔しいかも」
「えっ?」
「いや、別に。なんでもない」
 アホか、俺は。店に嫉妬してどうする。人じゃねぇ、店にだ。
 ……あ、嫉妬? 嫉妬ってなに言ってんだ、俺。
「――どうしたの?」
「え、あぁ。マジでなんともねぇって。それよりアフィリエイトのやり方って知ってるのか?」
「それが……よくわかんないんだよね」
「俺も調べといてやるよ。今日は……水曜日か。だったら土曜日、お前んち行ってもいい? それまでに調べておくから、アフィリエイトのこと」
「うん、お願いする!」
 話題は駿河屋ばっかりだな。……あぁ、俺もはまっちまったよ。駿河屋の魅力にな。

 ――土曜日。
 ピンポーン……。
「よう」
「おう」
 短な言葉でご挨拶。そして家の中、部屋の中へ。
「調べてきたぞ、アフィリエイトのこと」
「わたしも調べたよ。とりあえずウチのお父さんの名前で登録した。一応お父さんの言葉も参考にしてるから、これでいいんだよね」
「いいんじゃねーか。すべての判断は運営側が決めることだが……それでも心配だったらオヤジさんに記事書いてもらえ。一部だけでも」
「うん。……じゃあさっそくなんだけど、どうしよっか?」
「登録はしてあるんだろ。だったらちょっと貸して……あ、またパソコン借りるぞ」
 パソコンを起動。駿河屋のアフィリエイト画面に行く。
「メアドとパスか。これはみほが入力してくれ」
「はいな、まあその辺は最低限のマナーとして……どうぞ!」
「ん、ありがとう。で、ブログだな。お気に入りに入れてる? どこ?」
「シーサーブログにしてるよ」
「シーサーか。いいね、あそこはアフィリエイトするには最適だよな。……おっと発見。じゃ、クリックと……おぉ、もうログイン状態か。クッキーが効いているな」
「クッキー?」
「あぁ、記憶してるんだ、ログイン情報が。最後にログインしたときに情報を保存するかって表示があっただろ。するってしたとき、こうなるんだよなー」
 作っているブログは一つか。シーサーは五つまで作れるからな。まったく、便利なブログサービスだぜ。中には極悪なブログサービスもあるからな。広告がクソほど多いところや、ちょっとしたことですぐに一方的にブログを削除するところもあるらしい。
「なにを紹介する? ……特にこれといってなかったら駿河屋のショップ自体を紹介するか。だったら簡単だ」
「うん、それでいい。駿河屋最高だって」
「わかった。じゃあ目立つように記事の上に自由形式で固定しておこう。そうするにはデザインをいじってだな……」
 予習がとても役立った。設定が終わり、更新ボタンを押してみる。
「――これでたぶん、アフィリエイトリンクが貼れたはずだ。見てみるか」
 ブログの確認。そして思っていた通りにアフィリエイトリンクは貼れていた。
「わぁ、すごい……。ここを経由して誰かがなにかを買ったり売ったりすれば報酬がもらえるのね」
「あぁ。でもなかなか厳しいらしいぜ。アフィリエイトリンクってあんまりいい印象持ってないからさ。クリックしてくれるかが第一の課題だ」
「アフィリエイトが悪い印象? なんで?」
「過去……いや、今でもいるんだ。そういうタチの悪いアフィリエイターがさ。とにかくリンクを踏ませようとして、うざいってぐらいアフィリエイトリンク貼るやつ。偶然、そこを訪れた人はどう思う? なんか嫌な気持ちにならない? 買え買えって言われてるみたいでさ」
「あ! そういうブログ知ってる! そっか、あれってアフィリエイトだったんだ」
「そういう一部のアフィリエイターがいるから、アフィリエイトリンクに敏感になってんだ、皆が」
「そっか……なんか悪いことしてるみたいだね」
「でも、みほの場合はそうじゃないだろ。本当に駿河屋のことが好きで店を紹介してるんだ。今までの記事を読んだらそれがわかるよ。だからさ、アフィリエイトリンクは最小限にしたほうがいい。一応、バナーよりテキストリンクのほうがクリックされやすいし、うざがられないからそうしておいた」
「やるじゃん、修一!」
「へへっ。ちなみにお前のサイトってアクセスどんなもんだ。そういうの確認してる?」
「えぇと……十ぐらい」
「十? 十人相手にアフィリエイトかぁ……」
「たくさん記事を書いていけばもっとアクセスも集まるって。……それに最近ちょっとサボリ気味だし」
「サボりって……話題には事欠かせないだろ。駿河屋ネタは得意中の得意じゃん」
「うん、でも最近はヤフオクのほうばかりに力を入れてて」
「手続きとかするの俺だろ。みほは見てるだけじゃないか。もしかしてあんまりアフィリエイトする気ない?」
「そんなことない! 売って売って売りまくってやるわ!」
「じゃあ、記事数をもっと増やせよ。今のところ、十記事? 百ぐらいまで増やせない?」
「百ぅ? あんた、それわたしにコピペでもしろっての?」
「いいじゃん、コピペ。それでやろうぜ」
「ごめん、勢いで言ったけどコピペってなにをコピペするの? 2ちゃん?」
「2ちゃんか。あれはあれでけっこう面白いけど、それは2ちゃんだから面白いんだと思う。よくあるまとめブログなんかはやり方さえ学んだらできると思うよ。でもそれじゃあ決定打にはならない。せっかく本気で駿河屋のアフィリエイトをするんだ。お前にしかない、このブログにしか出せないものを表現したい。記事を増やす、コピペ……そう、評判だ! 駿河屋の評判をコピペしたらいい!」
「評判って、遅延だとかあの店は最低だとかそういうの?」
「そう。駿河屋の評判を見ると、きれいに二つに分かれるんだ。いい店だった。悪い店だった。いい評価なのは品揃えが豊富で値段が安いところだよな。悪いところは多くが遅延。また、遅延でクレームの連絡を入れてもスタッフはすぐに対応してくれない。だってそれが駿河屋なんだから」
「そ、それって悪口?」
「悪口じゃない。駿河屋の特性を知っていると、遅延で怒ることはなくなるんだ。世の中すべての人が」
「確かに……わたしたちも駿河屋の遅延に、今では慣れているけど最初のほうはそうじゃなかった。そうか! だったら遅延は当たり前。そのつもりで駿河屋を利用すべし! そう紹介したらいいのね!」
「あぁ、でもいいところばっかり書いても駿河屋信者とか言われるだけだから、悪く評価された内容についても書こう。俺たちもPS2本体が壊れていたこともあったし」
「あのとき、ちゃんと言い出していれば駿河屋は保証してくれた」
「あぁ、そうだよ。いろいろ問題はあるけど、駿河屋は最後まで客の面倒を見てくれる。だろ?」
「うん、なんか書けそうな気がしてきた」
「ますは口コミだ。駿河屋の口コミが書かれているサイト……たぶん三つや四つはある。駿河屋は買取もしているからな。買取サイトにもいろいろ書かれているはず。まずそれは全部コピペだ!」
「それじゃあとても百記事なんかじゃ収まらない」
「いいんだよ、それで。コンテンツが充実する。カテゴリの設定を忘れるな。『駿河屋の評判』なんてどうだ?」
「ねぇ、でもコピペなんかするとブログ削除されない? もしくはグーグルがサイト自体を表示させない……つまりペナルティを課すなんてことは?」
「シーサーはブログでアフィリエイトOKだと謳っている。どこぞのせこいブログサービスなんかじゃない。シーサーを信じよう。グーグルだって昔は厳しかったみたいだが、過去に多くのブログを圏外に飛ばした。無法者のアフィリエイターたちを排除するためといっていい。そのとき、多くのアフィリエイターが引退したという。アフィリエイターは禁断の技を使ったんだ。それはアフィリエイトツール」
「知ってる! よく宣伝しているよね。空いた時間で月十万を超すとか」
「そう、もっとひどい場合なんかは一月で百万円稼げるなんてことも書いてる。なんの根拠もないのにね。でも、未だそれを信じてしまう人たちがいるんだ。だからアフィリエイトツールはなくならない。使ってもすぐに圏外に飛ばされるか、ブログを削除されるだけなのに」
「アフィリエイトツールを売っている人たちってもちろん使うリスクは……」
「あぁ、知っている。知ってて売っているんだ。……ひどいよ。まるで詐欺だ」
「そういうのもアフィリエイターが嫌われる理由?」
「あぁ、金を稼ぐためなら手段を選ばないってやつだな。……思いきり脱線してしまった。さあ、コンテンツの充実化に図ろう」
「うん!」

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2014年02月08日

福袋に取り憑かれた女(19)

 さて、恒例の写真撮影だ。最初にファミコンだな。……まとめて写すか。後ろや真上からの写真も撮っておきたい。ヤフオクで載せられる画像は三つまでだ。まとめて二十本撮るしかない。
 裏技でもっとたくさんの画像をアップできる方法もあるらしいが、今回はパスだ。ファミコンだ、三枚でいいだろう。
 ソフトを裏返すと名前の書かれるものも少なくない。
「誰だよ、この山下って。さすがのファミコンクオリティだな。自由な時代だよ」
「でも、今もDSのカートリッジに名前書いてる子、いるんじゃない? ファミコンの時代よりは少ないと思うけど」
「当時、これらが一本六千円ぐらいしたんだよな。それにマジックで名前を書くか? 裕福な時代だよな」
 パシャ、パシャ……。
 そして、ビデオも一応パシャ。こんなの買ってくれる人、まずいないだろうけど、なにが起こるかわからないのがヤフオクだ。実験的に出品してみよう。世の中は広い。
「さ、次にアップしようか。またパソコン借りるぜ」
「どうぞ♪」
 これも慣れたものだ。さっさと目的の画面まで行く。
「タイトルか……『ファミコン二十本セット』でいい?」
「えー、ソフト名も書いてよー。画像に映ってるソフトも小さくしか映っていないんだからさー」
「はいはい。んじゃ、ソフト貸してみ」
 今回は出品数が少ないからな。特別サービスだ。
「魔界村……ドラクエV……ツインビーっと。影の伝説……ん? あれ?」
「どうかした?」
「いや、なんだ。左上に邪魔なシールが貼ってやがる。剥がしてやろうかって思ったが、見ろ。ヤマキめんつゆサマープレゼントだって」
「なにそれ?」
「ん、ちょっと待ってな。調べる……もしかしてレアものか。だとしたらマジでこの駿河屋袋、貴重なもん入ってんな。あ、出た出た」
 んー、限定品みたいだな。なになに、一万名限定だと?
 この数は多いのか少ないのかよくわからんな。でも、駿河屋は通常でも限定版でも区別しないらしい。値段はどうだ? プレミアついてたりする?
 某中古ショップで九千九百円の値段だった。ショップによっては一万円を超えるところもある。
「おいおいおいおい〜、マジかよ、駿河屋。しかもショップに映っている影の伝説より、俺たちの影の伝説のほうが状態が若干いいぜ。ヤフオクでも見てみるか。誰か出品しているかもしれない」
 すると、ちらほらあった。箱説付きで五万というのもあったし、裸の即決で五千五百円というのもあった。
「しかしこれはあくまで出品時の開始価格。この相場でスムーズに現金化できるとは考えられん。……とは言っても三千円ぐらいなら売れそうだな。他のソフトも付けたらさらに可能性は大だ。送料無料で確実だろう。おい、やったな。また当たり、しかも大当たりだ」
「一万いく?」
「いや、一万は無理だろ。影の伝説以外にもレアなソフトが入っていたら別だけどな。北斗の拳はどうだ。2なんて二本もあるぜ……あぁ、ダメだ。さすがにそれは夢を見すぎか。普通に三百円ぐらいで出品してる」
「じゃあ、セットで三千円でいこうよ、ね!」
「うん、いいと思うよ。送料はこっち持ちだからな。それでも売れたら千円は儲かってるぜ」
 えっと、本数確認だ。もし現物に十九本しかなくて二十本セット! なんて書いたらクレームにつながる。かと言って、セットだけではややパワー不足。ここは本数を明確にすべし。
「一、二、三、四……」
 丁寧に数える――が。
「十九、二十、二十一、二十二……あ? あれ?」
 二十二? マジでか?
「えっ、ちょっと待てよ。一、二、三……」
「どうしたのよ? 何回も確認して」
「いや、その……もしかして二十二本ある?」
「えぇ〜? それはないんじゃない。だって二十本で九百八十円なのよ。まさか二十二本なんてそんなサービスしてくれるわけ?」
「だってあるんじゃないか。俺の数え間違い?」
「とにかく今度はわたしが数えるから。一、二、三……」
 たぶんあるぞ。マジで二十二本。
「十九、二十、二十一、二十二……あるね」
「だろ? 北斗の拳2がかぶっているから一本サービスするってのはわかる。でも二本だぜ? 影の伝説の限定版も入って二十二本ってどうよ?」
「これ、他の人たちもそうなのかな。二十二本……」
「たぶん万が一足りなかったらってことじゃない。二十本っていって十九本ならクレーム。でも二十一本や二十二本だとしてもクレームにはならない。クレーム防止のためにちょっぴり多く入れてる感じなんだろ。起動ができないゲームがあったらってことかもしれないけどな」
「親切すぎでしょ、駿河屋さん……なんだか申し訳ないな」
「感謝だよ。売ってくれてありがとう。二十本なのに二十二本入れてくれてありがとう。限定版入れてくれてありがとうってな」

 ――というわけで二十二本セットとして出品完了。オークション終了日の六日後が楽しみだ。
「これで終わりっ!」
「ごめん、修一。もう一つだけ出品してもらっていい?」
「なんだ? もう売るものは全部出しただろ。もしかしてゴミみたいなビデオでも出すってわけ? あれはな……」
「違う。今回はプレイベートなやつ!」
「へぇ、いいよ。なに出すんだ?」
「ラノベ。廃盤になったやつマメにコツコツと集めてきたのよ」
「集めた? ……何冊? 同じやつだろ」
「三十冊集めた」
「アホか? よく買ったな。中古価格で一冊百円としても三千円か。投資目的?」
「うん、そう。でも売りどきをミスったら最悪だから今売るの。ちょうど同じ本が一冊入札されてた。しかも五百円で」
「他のショップでは買えないのか、その廃盤の本って」
「いや、実は買えるのよ。それが」
「だったら……売れないんじゃ」
「三十冊よ。こんなの一度に一気に放出する奴なんていない。誰かがわたしのあとを引き継ぐの。そして三十冊を倍の六十冊……いえ、もうそこまで来たらキリのいい百冊まで揃える。プロのコレクターならきっとそうする」
「そんなプロいねーよ。でも、まあ出すならいいぜ。乗りかかった船だ。やってやる」
 しかし、変わった投資だな。目のつけどころはいいかもしれないが、マジでよく三十冊も集めたよ。
「帯とかは? 全部初版でいいの?」
「帯は画像を参考に、でいいんじゃない。初版と再版があるからわたし、今から数える」
 福袋から始まって、いつの間にか商売する楽しさを覚えてきているな、俺たち。バイト代じゃなく、自分たちで稼ぐ。この発想はいい。たくましい大人になっているようなそんな気持ちになる。

 ――しかし、これは残念ながら入札はされなかった。オプションまでつけて目立たせたというのに。
 そういうこともある。売れるだろうと自信のあるものが売れなくて、逆に自信がないものが売れたなんてよくあることだ。そこがオークションのおもしろいところでもあった。
posted by サイコー君 at 23:21 | Comment(0) | 福袋に取り憑かれた女(自作ラノベです) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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